墨汁汚れを落とす方法~基本的には「落ちない」事実を理解しておきましょう

かずみ店員
子供さんが学校で墨をつけたのでそれを取って欲しいといった依頼を定期的に受けます。「墨汁汚れは日常茶飯事だろう」と簡単に落とせるものだと思われることが多いのですが、実はついた衣類の種類とその墨汁の量によって異なり、また意外と高額なしみ抜き代をいただくこともあります。まずこの墨の原料と作り方からお話します。

全ての墨汁・墨の汚れが落とせるわけではない

墨は、すすニカワを練り混ぜて香料を加えて作られます。

墨のあの黒い色は、物を燃やした際にでるあの「すす」です。何を燃やした時のすすかというとなたね油、椿油、ゴマ油などを燃やした時にでるすすを集めて材料とします。これらのすすは、手にとるとさらさらしてパウダーのようです。

ニカワは、墨を固めるために使います。ニカワとは、牛、水牛、鹿など獣類の骨、皮、腸などを水で煮た液を乾かし固めたものでゼラチンが主成分です。よく接着剤などに使われます。

香料は、ジャウ(天然香料)や合成香料が使われます。これらを練り混ぜて固めた物が墨なのです。

つまりこの材料を聞いただけで「簡単には落ちない」ということが想像できると思います。 何百年も前の遺跡から木片に墨で書いたなにやらが出てきたというお話はよくあります。それほど墨は分解されにくい粒子を持っているのです。

付着した衣類については、白の綿やポリエステルの制服についた墨の場合、100%落ちません。

先日あるテレビ番組で「墨は歯磨き粉を使うと落ちる」というのをやっていました。市販の歯磨きの中には、研磨剤が入っていてその作用で落ちるというのですが直径5ミリ位の墨をうすくするために、どれだけ繊維を痛めつけていたか…。結局だいぶ薄まりはしましたが、専門家や業者が見れば唖然とするような方法です。

専門的にいうと、墨を落とすには石鹸とタンパク質分解酵素を使って根気よく取っていくしかありません。墨汁汚れはテクニックや洗剤うんぬんというより体力勝負です。かなりの時間と労力を要しますので、落とせたとしてもお客様が想像する以上のしみ抜き代をいただくことになるでしょう。従ってトラブルに発展しやすい依頼です。

厚手のウールで少しの量でしたら落ちるかもしれませんので行きつけのお店にご相談下さい。

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